今回は前回に引き続き「年金」について私が思うことを書いてみます。
「年金はもらえなくなる」「年金制度は崩壊する」と言う人が知るべき“年金の真実”
前回に引き続き、ファイナンシャルプランナー山中伸枝さんの上記記事のコメントを幾つか引用しますので、興味のある方はぜひ上記記事をお読みください。
現在の日本で少子高齢化が進んでいることはほぼ全員が認識していることですが、よくマスコミは少子高齢化により「おみこし型から肩車型」へのシフトしていくため、年金制度は継続が難しいと書き散らしています。
これを間に受けて「年金なんてどうせ貰えないから払うだけ無駄」と信じている人も少なくないかも知れません。
しかしこんな言葉を間に受けていたら、逆に大変なことにならないか?
確かに現行の日本の年金制度は現役世代が拠出したお金を高齢者に支払う賦課方式ですので、現役世代の数が減って高齢者の数が増えていくと当然のことながらいずれ崩壊する可能性は否定できません。
これが日本政府を攻撃したいがために「年金制度は崩壊している!」と主張する反日マスコミの主張の肝になる部分ですが、しかし上記記事の中で山中伸枝さんは以下のように主張されています。
「年金保険料を払う現役世代」と「年金受給者」として分数に直すと、年金制度が出来た1960年代と現代のバランスはそう変わっていない。(山中伸枝氏、上記サイト参照)
これを簡単に要約すると、少子高齢化は大幅に進んだが、高齢者の数が増えても年金を支払う側の人(年金制度を支える側の人)の数も同様に増えているということで、生産年齢人口の減少と年金制度を支える人の減少は必ずしも関係していないと言われると、少し意外な気もしますね。
しかしよくよく考えてみれば、これは当たり前のことでしょう。
以前にも紹介した漫画サザエさんを眺めているとよくわかりますが、この漫画がアニメ化された1969年頃は、
・定年は55歳
・女性は専業主婦が基本
このようなケースがほとんどだったわけですから、現在のように基本的に65歳まで働き、女性もできるだけ長く働くのが当たり前の時代になると、むしろ支える側の人が増えていくのは誰が考えても明らかなことでしょう。
【1969年頃】
・定年は55歳
・女性は専業主婦が基本
【現在】
・定年は65歳
・女性の就労は普通(専業主婦が激減)
※年金を支払う期間が10年伸びて、更に男性だけでなく、女性も支払うようになれば、たとえ少子高齢化が進んでも、なかなか収支バランスが変わらないのも当たり前のこと!
「この収支バランスをさらに強いものにするための対策が、高齢者の就労促進や適用拡大といった昨今の施策です」と山中伸枝さんも書かれていますが、年金制度は制度発足以来様々な改定が行われており、かつ今後も制度改定が行われていくはずですので、世間一般に思われているほど脆弱なものではないことは断言できると思います。
とはいえ、現行の年金制度にはやはり幾つかの弱点もあります。
・インフレに弱い
・収支バランスが大きく崩れると減額になる
この内のインフレについては、以前の記事でも書きましたので、ここでは収支バランスについて軽くチェックしておきましょう。
以下の資料1頁のグラフをご覧ください。
このグラフによると2050年には日本の人口が9,515万人にまで減少するようですので、現在の人口(2022年8月現在12,322万人)の77.2%になることが分かります。
これは現行のまま何も対策を打たなければ、2050年には今の75%くらいの年金に下がる可能性があることになりますね。
前回の記事に書いた、令和2年度の老齢厚生年金の平均月額支給額146,145円ですので、この75%は109,608円。
現在50歳の方は、30年後の80歳前後には最悪10万円強にまで厚生年金支給額が下がる可能性があることは、とりあえず考慮しておくべきかも知れません。
(これはあくまでも最悪値で、実際にはここまで下がることはないと思いますが)
しかしこれでも現在の国民年金平均支給額(64,816円)よりはるかに多額で、多少減額されたからといって、年金崩壊などと大騒ぎするようなことではありません。
なんと言っても以前から、自営業者の方の国民年金は最大でも64,816円しか支給されていないのですから、厚生年金を受け取る権利のある会社員、公務員が多少減額されたからといって大騒ぎすればバチが当たります。
というよりも、はっきり言って、現在50歳以上の中高年サラリーマンの方にとっては、年金制度の崩壊(減額を含む)なんてほとんど気にする必要は無いでしょう。
なぜなら先程のグラフで明らかな通り、仮に最悪の事態があったとしても20年後(70歳前後)以降の話であり、しかも年金が減額される最大値はおそらく2割5分(25%)程度。
それから先、仮に余命20年(90歳まで生きる)とすると、年金減額金額の約4万円を補うためには、
4万円×12ヶ月×20年=960万円
要するに1,000万円ほど準備すればOK!
心配な方は70歳前後で少なくとも1,000万円残るように気を付けて資産管理することで、おそらくなんとかなるような気がしますね。
(そもそも最悪の事態なんてまず起こりませんし、仮に年金減額があるとしても高額年金支給者から多く減額するのは確実ですので、平均金額の14万円前後受け取る方は、おそらく15%までの減額で終わると思いますが…)
ちなみに一般的に「年金」と呼ぶから積み立て貯金か何かと勘違いされる人もいるようですが、正式名称は「厚生年金保険」で、その性質はれっきとした「保険」。
山中伸枝さんも「老齢年金は長生きリスクに備える保険」といった趣旨のことを書かれている通り、老後に受け取る年金やその他のお金は、あくまでも自分で作り上げていくものといった考え方が必要でしょう。
・厚生年金
・企業年金
・確定拠出年金(もしくはiDeCo)
・貯金
・株式(もしくはNISA)
・投資信託
・インデックス投資(S&P500ETF)
例えばこれらのもののうち、それぞれの収入、それぞれの生活環境の中で、自分にできるものを組み合わせて、準備していくこと。
そしていたずらに「将来年金は貰えないかも」などと不安に駆られるのではなく、厚生年金プラスアルファの部分を、例え少しずつでも膨らましていくといった姿勢が大切なのだろうと思います。
今回も少し長くなってしまいました。
この続きは次回とさせていただきます。