さて、ハイパーインフレについてこれまで3回にわたって私なりの見解を書いてきましたが、今回はとりあえずの結論です。
第1回の記事でご紹介した2021年8月6日付け記事、関東学院大学経済学部の島澤教授が書かれた以下の記事を再び取り上げ、このテーマのまとめにしたいと思います。
これまでの記事で書いてきたことを改めて要約すると、
・ハイパーインフレが発生すれば、例えば100円の品物が一夜にして1万円以上に高騰するような事態が発生する
・過去の歴史では日本を含めた多くの国でハイパーインフレが発生している
・日本でハイパーインフレが発生すると、円の価値が暴落するため、極端な円安になる
・この場合、預金も国債も大暴落するため、ほぼ無価値のような状態になる
・ハイパーインフレは自国民が自国の通貨を売って、外貨を買う(いわゆるキャピタルフライト)により発生しやすい
あるいは読者の中には、極端な円安になれば輸出に有利なので、むしろ経済的にはプラスになるのではないか、と考える方がいるかも知れません。
しかし上記記事の中で島澤教授は以下のように警告しています。
「(国内物価を原因とした)円安は輸出には有利にならず、輸入を一方的に不利にするので、輸出で稼いだお金で手に入れられる輸入品が大幅に減少してしまう。これまで当然のように手に入っていたものが購入できない、手に入らないという経済破綻が現実となり、大多数の国民生活は極度に困窮することとなる」
※引用元:財政破綻の真の問題は国民生活の破綻
「大多数の国民生活は極度に困窮することとなる」の一文は、刺激的な言葉ですね。
もしかしたら、「私は今、預金もほとんど無いので、世の中のお金持ちがみんなゼロになるならかえっていいかも!」と考える人がいるかも知れませんね。
実際、先程の島澤教授の記事の中でも、
「(終戦直後の日本のハイパーインフレを解消する過程で)金融資産であれ実物資産であれ、資産を多く保有する富裕層が没落するなど、莫大な政府債務の実質的な解消とともに、社会階層がいったんリセットされる「グレートリセット」が発生した」
と書かれていますし、このことを引き合いに出して「グレートリセットを望む若者世代が存在する」ことも認めています。
現在の日本ではとんでもない額の政府債務を抱えていますので、莫大な政府債務を解消するためには、ハイパーインフレしか方法がないと考えているとしたら、日銀が意固地になって金融緩和を続けているのは正しいのかも知れません。
(但しこの場合は、日本政府の債務が解消される一方で、多くの日本国民が塗炭の苦しみを味わうことになりますので、こんなことはないと信じたいところですが)
しかし残念ながら、島澤教授はグレートリセットは起こらないと断言されています。
そしてこれこそこの4回の記事で声を大にして言いたかったことなのですが、
「ハイパーインフレーションが発生すれば、インフレに弱い預貯金が資産の大半である一般庶民が大きな損害を受ける一方、実物資産を多く保有したり、金融資産を海外に逃避させることができる富裕層ほど影響は受けない。次にハイパーインフレーションが生じたとしても、グレートリセットは起こらず、持てる者はさらに富み、持たざる者はさらに失うため、貧富の格差は一層拡大する」
※引用元:財政破綻の真の問題は国民生活の破綻
こんなことを書くと反論されるかも知れませんが、ある程度お金に余裕がある人は、ファイナンシャルリテラシー(金融の知識)が高い人が多いのはおそらく事実だと思います。
そして前回の記事でも書きましたが、ハイパーインフレが起こりそうな気配を感じれば、ファイナンシャルリテラシーの高い人は、さっさと外貨を購入(例えば円売り、ドル買い)したり、金を購入したり、外国株式ETFを購入したりするでしょう。
私も数年前からS&P500ETFや金を購入したり、あるいは確定拠出年金の内訳を外国株式中心に切り替えたりしています。
日米の金利差を眺めながら、今後は更にS&P500ETFの購入を拡大しようと考えていますし、もしハイパーインフレの可能性が高いと感じれば、少なくとも5割程度の金融資産を即座に外貨に変えてしまうでしょう。
過去の記事にも書きましたが、ハイパーインフレが起こる原因は、
「その通貨を発行している中央銀行、あるいはそれを支えるその国家、その経済、それらいずれかの(あるいはすべての)信用が失われる(疑問を持たれる)こと」
要するに日本政府の財政が債務過多で行き詰まった時には、おそらくハイパーインフレの気配が漂い始めますので、現在のインフレを横目で眺めながら、その時に即座にキャピタルフライトできる準備を進めて頂ければと思います。
日本で次にハイパーインフレが起こるとすれば、その結果は「グレートリセット」ではなく、確実に「貧富の格差の拡大」になるだろうと思いますので…
予定に反してインフレ関連の記事を4回も続けてしまいました。
次回は全く違う、もう少し軽いテーマを書いてみたいと思いますので、またお会いできる日を楽しみにしています。