最近、テレビでもネットでも毎日のように話題になるインフレ。
教科書的に言えばインフレとは「貨幣価値が下がり物の値段が騰がる」ことですが、ガソリンから日曜品から食料品まで、近頃は値上げの話を聞かない日がないくらいですね。
それでも現在の日本は欧米に比べたら遥かにマシのようで、何かの記事で見かけましたが米国でちょっとした朝食を食べたところ、ごく普通のお店にも関わらず、一人当たりチップ込みで4,000円以上もかかったとか。
また、日本から米国に出張で出かけたビジネスマンが、外で食事すると費用がかかりすぎるので、ホテルの部屋で缶ビールを飲んでいるいるといった記事もありました。
アメリカの物価が高すぎて…ビール1杯1800円に日本人サラリーマンは「宿で寂しく缶ビール」
そこで、このインフレについて少し考えてみたいというのが今回のテーマで、ちょうど1年くらい前の2021年8月6日に、関東学院大学経済学部の島澤教授が、インフレに関連して以下の興味深い記事を書かれていますので、今回はこの記事を題材に少し考察してみたいと思います。
できれば上記の記事全文を読んで、自分ごととして考えていただきたいのですが、まず前半部分に第二次世界大戦直後の混乱期に起こった、日本のハイパーインフレについて触れられています。
なんでも1934~36年の卸売物価を基準とすれば1949年までに約220倍、終戦の1945年を基準で見ても4年間で約70倍、消費者物価指数では約100倍といったとてつもないインフレが、この日本で起こったことはやはり記憶しておく必要があるでしょう。
東日本大震災が起こった時、太平洋に面する三陸海岸で数千人の死者を出した1933年(昭和8年)の昭和三陸大津波の後に建てられた(岩手県のある村の)石碑に、「此処より下に家を建てるな」と書かれていたことによって難を逃れたケースが紹介されていましたが、1933年の大津波が2011年に繰り返されたように、1949年のハイパーインフレがいつか繰り返されないとは言い切れませんからね。
仮に100倍のハイパーインフレが発生したとしたら、これまで100円だった商品が1万円になってしまう訳で、老後2,000万円問題は老後20億円問題に拡大してしまう。
こうなるとどんな準備をしても手に負えなくなってしまいますが、総務省統計局「家計調査」によると、平均的な勤労者世帯の家計(勤め先収入)が毎月53.7万円だそうで、物価が100倍になるということは給料5,400円と同じことになりますね。
給料5,400円で一家四人が生活するのも無理がありますし、たまらず生活保護を申請しても、これまで10万円もらえていたのにハイパーインフレによって千円の価値しかない。
こんな数字を眺めると、こんなハイパーインフレなんて起こるわけがないだろう!という気もしますが…
ただ、過去の歴史を振り返ってみると、世界の各地でこれまでに何度も発生していることが分かります。
◾️近年のハイパーインフレの例
・トーマス・サージェントは、1982年の論文『四大インフレーションの終焉(The Ends of Four Big Inflations)』において、第一次世界大戦後にハンガリー(1922年 – 1924年)、オーストリア(1922年- 1923年)、ポーランド(1921年 – 1924年)、ドイツ(1922年 – 1923年)で生じたハイパーインフレーションを分析。
*Wikipediaから引用
・ジンバブエ
2008年11月に前月比796億%という、記録的なインフレ率を記録
・ブラジル
1986年から1994年までの間に、2兆7500億分の1のハイパーインフレーションが発生
・ユーゴスラビア
もともとインフレ率が高かったが、1989年に爆発的なインフレーションが発生。これはいったん収まるが、その後のユーゴスラビアの解体と紛争の時期にふたたびインフレーションが発生し、1993年には116兆パーセントの超ハイパーインフレーションが発生
・ベネズエラ
2015年に98.3%のインフレを記録した後、2016年のインフレ率は700%に達したとのこと。この傾向は現在も続いていて、2019年1月に記録したインフレ率は、年率268万%と発表された。
ほとんどが戦争や紛争などの混乱期に発生しており、さらにそのほとんどが発展途上国で、いわゆる先進国の中で(日本を除けば)ドイツが唯一の経験国になりますかね?
こう考えると現在の日本のインフレなんてまだまだ可愛いものですが、問題は近頃のインフレがいずれハイパーインフレにまで拡大してしまうことがあるのか?
また、ハイパーインフレになる気配が出始めたら、いかにして対策すべきか?
少し長くなってしまいましたので、この続きは次回とさせていただきます。