定年まで働けない人がおよそ7割?


2021年3月4日付け「日刊SPA」に興味深い記事が掲載されていました。

「定年まで働けない」7割が回答。40~50代会社員がコストカットの標的に

この記事は雑誌「週刊SPA!」が実施した全国の40~50代会社員3,000人アンケート(調査期間:2021年1月25日~2月1日) の回答結果についてまとめたものですが、「定年まで働くのは難しくなったと感じる?」の質問に対して、「はい」と答えた人がなんと7割近くにも上ったとか。

*引用元: 「定年まで働けない」7割が回答。40~50代会社員がコストカットの標的に

この調査が実施されたのは、新型コロナウイルス発生からおよそ1年後のタイミング、大幅に業績を悪化させる企業が続出していたタイミングでもありますので、多少悲観的回答に傾いた可能性があるとはいえ、40~50代会社員の7割とはすごい数字ですね。

悲観的な報道に傾きがちな新聞、テレビニュースなどの影響も大きいのかなという気もしますが、なぜそこまで悲観的に考えているのでしょうか?

その回答は以下の通りです。

*引用元: 「定年まで働けない」7割が回答。40~50代会社員がコストカットの標的に

この1位の回答「業績の悪化」は先程書いた通り、新型コロナでやや過剰に反応しているとはいえ、注目すべきは2位「年功序列の廃止(ジョブ型雇用の推進)」と3位「管理職の削減」になりますかね?

最近は日本の大企業を中心にジョブ型雇用の検討が進んでいますが、ジョブ型雇用とは大雑把に言えば業務内容や責任の範囲、必要なスキルなどをあらかじめ明確にして、これこれの仕事については性別、年齢、経験全て無関係に一律年間600万円支払う、といった雇用形態のことです。

したがって別部署への異動や転勤などは無く、昇格・降格もありませんし、何時間働かなければならないといった、労働時間といった概念もないことが多い。

この雇用形態は日本のメンバーシップ型雇用形態しか知らない人には目新しく写りますが、海外ではこれが普通で、むしろ最も古い雇用形態の一つ。

以前、英国の会社の方と一緒に仕事をした時、彼は日本企業の人事異動、例えば営業課長だった人が突然経営企画部門に異動になったり、総務担当だった人が翌年からは人事課長に異動になったりするケースを奇妙な目で見ていましたが、このように何でも屋のように職場を転々とする人事異動は、日本独特の労働基準法でその人をクビにできないからやむを得ずに実施している一面もあって、人事課長に空きが出たなら人事専門の経験者を雇うのが、海外の企業にとっては当たり前すぎるくらい当たり前のことなのでしょう。

試しに「ジョブ型雇用 採用企業」で検索してみると、日立製作所、KDDI、富士通、資生堂、パナソニック、双日、三菱ケミカル、ニトリ、カゴメなどは既に採用して一定の成果を上げているようですね。


では、なぜ日本企業でジョブ型雇用を検討、実施する企業が増えていくのか?

これは言うまでもなく、働かないおじさん問題を一掃したいからに他なりません。

上記の記事にも、ジョブ型雇用を取り入れた金融系の企業人事担当者のコメントとして、

「年功序列は会社の成長拡大が前提の制度。この状況下で続けていくのは難しい。ただでさえ政府から『70歳まで雇用を守りましょう』とお達しが出ていて、どこかでコストカットしないと経営を維持するのに必要な人材の雇用さえ守れなくなってしまいます」 

と発言されているそうですが、年功序列や終身雇用といった昭和時代のやり方を続けた結果、日本は欧米、アジアの経済成長に全くついて行けなくなり、およそ30年間もの長期間に渡って賃金が上がらない異常な状態に落ち込んでしまいました。

これは単に年長者(正社員)の雇用を守るだけのために、多くの若手社員を非正規に追いやった政策を続けてきましたが、いよいよこのやり方に対して各企業が「ノー」を突き始めたのかも知れません。

更にこの記事の中には、

「コロナ禍において最も働き方の変革を突きつけられたのが管理職。リモートワークが一気に普及し、職場で部下に命令し、サボらないか監視していただけの管理職は『いなくても大丈夫だな』とメッキがはがれてしまいました」

このような文が記載されていますが、今の管理者の中には、WEB会議やチャットツールを使いこなせず、在宅勤務している部下が何をしているか全く把握できない方も少なくないとか。

このような管理職、あるいは中高年社員に対して、年功序列というだけで高い賃金を支払うことができなくなりつつある。

こんなこと、子供が考えても当たり前のことだろうと思います。

私が以前に書いた記事「雇用延長とモチベーションについて」の中で、定年後の雇用延長でモチベーションを維持させることは非常に難しいと書きましたが、定年後どころか50代からいよいよ早期退職のリスクに怯える時代が近づいてきているのです。

このように考えていくと、中高年サラリーマンが複数の収入の流れを持つことは、これからの経済的防衛の観点からも非常に重要なことですし、その準備を進めるかどうかで大きな差異が生じてくる。

このことだけはおそらく間違いないのだろうと思います。


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