2019年7月5日のDIAMOND ONLINEに久留米大学教授の塚崎公義氏が「老後には1億円必要だが、普通のサラリーマンは何とかなる理由」といった記事を書かれています。
*引用元:DIAMOND ONLINE
塚崎氏が記事を発表した2019年7月は、この年の6月に金融庁の審議会が発表した報告書、いわゆる「老後資金2000万円不足報告書」で大騒ぎになっていた時期ですが、世の中の大半が「老後2000万円問題」で大騒ぎしていた頃に、「何とかなる」といった記事を見かけ、興味深く読んだのを記憶しています。
ちなみに2020年1月から2022年3月頃までは世の中の話題がコロナ一色でしたので、2019年の頃の世相を忘れてしまった方も多いかも知れませんね。
今回はこの記事を材料に、少し退職後のお金について考えてみたいと思います。
ちなみに上記塚崎氏の記事の要約を簡単に箇条書きにすると以下の通り。
① 老後資金は1億円必要
② 但し、貯金が1億円必要なわけではない
③ サラリーマンは年金が比較的安定している
④ サラリーマンは退職金が出る
⑤ 遺産が入る可能性もある
⑥ 定年直前に資産ゼロでも家があればなんとかなる
それぞれ軽く追記すると、①の老後に必要なお金1億円は次の前提条件で試算しています。
・60歳で定年(夫婦同年齢)
・夫婦2人が92歳まで32年間生きる
・月の必要経費25万円
25万円×12ヶ月×32年=9,600万円
(予備400万円)
しかし③でサラリーマンは年金が安定していると書いた通り、標準的なサラリーマンと専業主婦は夫婦合計で毎月約22万円の年金が受け取れます。(厚生労働省データによる)
そうなると月に25万円の必要経費がかかるにしても、22万円の厚生年金が支給されるとしたら月の不足額は3万円程度。
実際には年金からも健康保険料や税金などが差し引かれるので、少し不足額を多めに見て月の不足額は5万円程度。
ただ、年金が支給されるのは65歳からなので、60〜65歳の5年間はまるまる月に25万円が不足すると考えると、不足額の累計は以下のようになります。
A. 60〜65歳
25万円×12ヶ月×5年=1,500万円
B. 65〜92歳
5万円×12ヶ月×27年=1,620万円
仮に60歳で退職する場合は、A+Bの3,120万円が不足。
65歳まで(雇用延長などで)働き、65歳で退職した場合は、Bの1,620万円が不足。
先程の塚崎氏の記事を相当アレンジしてしまいましたが、「老後2,000万円問題」で指摘された金額は概ね間違っていませんね。
実際に60歳までに2,000万円を用意できている現役サラリーマンは少ないかも知れないが、上記④で記載の通り、普通のサラリーマンは退職金が出るのでおそらく心配は無用。
(一般的なサラリーマンの退職金は1,700万円から2000万円)
そしてこれこそ個人差が大きいものとはいえ、運が良ければ⑤に記載の遺産が手に入るケースもあります。
日本の高齢者は、平均すると結構な金融資産を持っているそうで、「報告書」によれば、70歳以上の世帯は平均純金融資産額が2.000万円弱と書かれています。
この記事を読んでいるあなたも相続を期待している一人でしょうか?
しかし、老後に借家の家賃を払い続けたり、住宅ローンの返済を払い続けたりするのはキツイですね。
定年の60歳で退職するか、雇用延長を満了して65歳で退職するかに関わらず、貯金+退職金で住宅ローンを払い終わり、更に年金が支給される65歳までの生活費を確保すること。
これが無事に自由人になるための最低条件と言えるかも知れません。
塚崎氏は「退職金と遺産の合計が2,000万円あれば、それで大丈夫な計算だし、足りなければ働けばいいと」言われていますが、まさにその通りでしょう。
・退職までに住宅ローンを完済する
・65歳までの生活費を確保する
・それが難しい場合は65歳まで働く
・可能なら65歳以降も働く
・それでも足りなければ倹約する
勉強したり、あれこれ準備することはもちろん必要なことですが、サラリーマンは何とかなると楽観的に考えることも大切なことなのだろうと思います。