黄金の15年に向けて(前編)


本日は神戸松蔭女子学院大学教授の楠木新氏が2020年10月16日付で公開し、2022年7月7日付で更新された以下の記事について考えてみたいと思います。

「定年後を“黄金の15年”にできる人」と「人生に悔いを残す人」を分ける50代の働き方 

ちなみにこの方は京都大学法学部を卒業された後、大手生命保険会社に就職して支社長などを歴任するも、47歳の時にうつ病で勤務を休職し、その休職期間中に大阪府立大学の大学院でMBAを取られた方。

2015年に定年退職された後は、楠木ライフ&キャリア研究所の代表を務められ、2017年にはベストセラーとなった「定年後」を上校。

その後、2018年4月より神戸松蔭女子学院大学人間科学部都市生活学科教授になられたそうですので、途中でうつ病といったアクシデントがあったとはいえ、大多数の中高年から見れば、羨ましい定年前後を送られていると言えそうですね。

楠木氏は上記記事の冒頭で、「後悔のない人生を送るためには50代が重要」と断言されています。

そして「定年前後のギャップに戸惑い、定年後をどのように過ごせばいいかわからず立ち往生している人が少なくない」とも言われていますので、たかが定年とはいえ、定年後の時間が長いだけに難しいものですね。

ここで少し試算してみましょう。

仮に定年後、1日15時間、月に20日間何らかの活動をしたとします。

これは単なるシミュレーションですので、定年後の仕事でも、何かの創作活動でも、趣味の探索でもなんでも構いません。

この場合、60〜85歳まで活動したとすと、25年間で90,000時間もあることになります。

15時間×20日×12ヶ月×25年間=90,000時間

一方、大学卒業後に会社で何時間働いたかを振り返ってみると、仮に1日10時間ずつ働き続けたとしても、定年までの38年間でトータルの勤務時間は91,200時間にしかなりません。

10時間×20日×12ヶ月×38年間=91,200時間

要するに定年後の時間は、新入社員から定年まで毎日10時間会社で仕事をする時価とほぼ同じだけありますので、定年後の生きがいや自分の居場所を見つけられずにいると、立ち往生することも分からないでもないですね。

かなり極端な例に例えると、定年後何もせずにい続けることは、会社に入ってから定年までなんの仕事もせずぼんやりし続けることと同じことですので、何をしていいかわからず立ち往生してしまうと大変です。

楠木氏は60歳から74歳までを「黄金の15年」と名づけているそうですが、この15年間(60歳から74歳までなら14年間?)を先程の数式に当てはめてみると、

15時間×20日×12ヶ月×15年間=54,000時間

現役の労働時間を大雑把に90,000時間とすると、その6割(54,000÷90,000=0.6)の時間となりますので、体が元気に動くであろうこの54,000時間をいかに有効に活用するか?

この15年を元気に充実して過ごせる人は「終わり良ければすべて良し」で、過去につらいことや大変なことがあったとしても「良い人生だった」と思えます。逆に、若い頃は仕事をバリバリこなして活躍しても、「黄金の15年」が充実しない人は、人生に悔いを残すことになりかねません

※出所:「定年後を“黄金の15年”にできる人」と「人生に悔いを残す人」を分ける50代の働き方 

今回取り上げた記事に書かれている上記コメントはまさに肝に銘じるべき言葉ですね。

だからという訳ではありませんが、60歳から雇用延長した場合の5年間(場合によっては70歳までの10年間)は、本当に「充実して過ごせる時間」なのか、私ははなはだ疑問を感じている次第です。

雇用延長制度とモチベーションについて

それだからこそ、定年を迎えてから「第2の人生」について考えるのはあまりにも遅すぎることで、現役のうちから次のステップへの準備を始めることが大切なのはこのブログでも何度か書いてきた通りです。

しかも中高年サラリーマンの場合、多くの方は50代半ばに役職定年を迎えて給料が減り、肩書きも部下も失うことになります。

その喪失感は多くの方が「俺ももう終わりかな」と感じてショックを受けるそうですが、それも当たり前のことですね。

楠木氏ご自身も、生命保険会社に勤めていた47歳の頃、前期の通りうつ病で休職されていますが、50歳で復帰した時にはそれまでのハードワークだった支社長や担当部長などの役職を失い、平社員になったとのこと。

そしていざ時間ができると「何をしていいのかわからなくなり、いかに自分が会社にぶら下がって生きていたかを思い知った」と書かれていますが、楠木氏のコメント通り、会社という居場所から離れたら、やることがないという方は決して少なくないでしょう。

しかしこの方はこの逆境の時期に、会社員と並行して物書きとしての活動を始め、その行動がもう一つの仕事(退職後の本業)につながって行くのですから、このバイタリティは見習うべきだろうと思います。

塞翁が馬ではありませんが、何らかの行動さえ起こせば、何が自分にとって奏功するかは誰にもわからないことですので。

今回も長くなってしまいました。

この続きは次回とさせていただきます。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です